「少女には向かない職業」☆×7
(封印指定)東京創元社:著・桜庭一樹
“あたし、大西葵13歳は、中学2年生の1年間で、人をふたり殺した。”【島の夏を、美しい、とふいにあたしは思う。強くなりたいな。強くて優しい大人になりたい。力がほしい。でも、どうしたらいいのかな。これは、ふたりの少女の凄絶な《闘い》の記録。『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の気鋭が贈る慟哭の傑作。】※この先にネタバレは一切ありません。あるのは感傷だけです。これは俺の闘いの記録であり、後悔の証。よってこれまでの自分に一片の迷いも持っていない方には、激しく無価値なものだと申し上げておきます。
少女の魂は殺人に向かない。
誰か最初にそう教えてくれればよかったのに──人は人を殺す──
それはいつまでも、どこまでいっても。古今東西、未来永劫──それだけはずっと、絶対、変わらない。
人がそこにいる限り、人が人である限り、人が人であるために。
人は容易く人を殺す。
笑いながら、泣きながら、怒りながら。
そして、悼みながら。
これまで連綿と続けられてきた、最も原始的な行動のひとつ。
愛するように、営むように、貪るように──誰かを、殺す。
すでに、お節介とも言うべき神の恩寵を受けて、生命が──ヒトが現出したときから、それは避けられない事象。
だが、それは絶対的なタブーをも生み出す。
同族殺しの抑制。
生物に持って生まれた本能であり、社会によって刷り込まれた倫理である。
主に法治された世界では、まさに特級的罪悪──時代によっては、そして場合によってはその代償も、またその命。
まさに極刑──目には、目を。歯には、歯を。血は血でもって濯ぐべし。
だが、それでも人は人を殺すことを止めない。止められない。
いまだかつて、それを思いとどまらせたことなどない。
それは生物学的に抑止する本能よりも、徹底した教育による倫理よりも、なお、強い。
なぜ人は殺すのか?
なぜ命は奪えるものなのか?
なぜ殺さずにはいられないのか?
拭い去れない宿業──人として生まれついたサガだからだ。
それは──残酷ながら、誰にしも起こりうる事実でもある。
なぜか。
一般的に“殺人”という行為は“その存在が己にとっての許容量を超えた際に起こる”こととされている。
それなら。
それが真理だとしたら。
それこそ──まさに“日常”そのもの。
今、ただ今。生きるこの瞬間でさえ起こっている、起こしていることではないのか?
つまり。
──日常的に誰かを“殺して”いないだろうか?
憤怒に身を任せたとき、憎悪に心を焦がしたとき、欲望に膝を屈したとき。
それこそ、一時の感情を振りかざし、誰かをあっけなく“殺して”いたことが、あるだろう。
きっとある。あるハズだ。
罪ではない。それは決して裁くことのない、裁く必要のない──思想の自由。
だがしかし。
だからこそ、止められない。
一切の刑罰もなく、そこには──自分のセカイでは、そこかしこで人が死ぬ。
彼はキライ──だから、死ね。
彼女はキライ──だから、殺す。
アイツはキライ──だから、なくなれ。
それは排除。
余分で、余計な──外敵の排斥。
最も簡単で、残酷な存在の削除の方法。
誰にも気付かれない、気付かない。
おまけに血は出ないし、凶器もいらない、だから証拠も出ない。
究極無欠の完全犯罪。
だから、そこには抑制なんてない。
止める必要も、留まる必要さえもない。
だから──“殺す”
理性という脆弱なタガが外れた矢先、もはや一片たりとも容赦はなく人は不必要な人を、不愉快な人を“殺して”いく。
行われるのは、一方的な大虐殺。
誰にも邪魔されない狭いセカイで、無残に、無慈悲に、機械的に抹消されていく命。
始めは無邪気に、次は愉悦に、その次は悪意に、最後は──無価値に。
キリもなく、それこそ──いつでも、いつまでも人は人を“殺し”続ける。
弱い自分のために、脆い自分を隠そう、護ろうと。
鉄壁の拒絶。
他者の存在、魂の拒否。
だが、それは──
裏を返せば、受け入れられなかった認識の慣れの果て。
確かに、一度は見たはずで、感じたはずだ。
でも、だめだった。
だから“殺した”──そうやって、納得させるとともに自分を護ったはずだ。
そこには一見でも、一瞬でも。
認識していた──繋がっていたときがあった、きっと。
果たして、そこに後悔はなかったか?
感じた“痛み”はなかったか?
今も残る“傷”はなかったか?
ならば、その痕が消える前に。それとも拭っても残ってしまう前に──気付ければまだ間に合う。
まだ“殺人”の罪悪を抱えているうちに、手を伸ばせ。
捕まえてほしいと声を上げろ。
なけなしの涙を惜しまず、か細い声を振り絞って──助けを求めろ。
やがて痛みすら感じなくなる、覚えなくなるイキモノに──オトナになってしまわないために。
いつか後悔してしまう、その前に。
思い知れ。
その走った苦痛を──
その刻んだ傷痕を──
その放った慟哭を──
いまだ“殺人者”には向かない少年のうちに。
いまだ“殺人者”には向かない少女のうちに。
それまでの己の“弱さ”を受け入れて。
これからの己を“強さ”を見つけ出せ。
「あたしたち、人を殺したの。殺人者なの。お願い、あたしたちを捕まえて」
- 2006/05/22(月) 22:09:31|
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コメント:5
うん。
この作品に関してはこういった感傷もありだと思います。
文字通りかどうかわかりませんが共感できるものがあると思います。
そんな複雑な感覚を、大人はなにか便利で簡単な一言に纏めちゃうんでしょうけど、まとまらなくったっていいんですよね。
いまにも走り出したい、でもいま走り出しちゃいけないことは解ってる、だけどジッとしてはいられない、そんなソワソワ感とかウズウズ感をこの作品に感じました。
- 2006/05/23(火) 00:55:57 |
- URL |
- kobaken #iOxDjh3E
- [ 編集]
kobakenさんとこぱさん…ちょっと似てる>挨拶
>>kobakenさん
初めまして、この度はTB元へのご訪問ありがとうございます。
>うん。この作品に関してはこういった感傷もありだと思います。
てか、ぶっちゃけるとウチの感想って元は全部感傷なんですけどね…
というより、何かしらの感想というモノは全て感傷に根ざしているというのが持論です。
文字通り“何を感じたか”ということなので、そこにはその人の価値観を始め、もろもろの人生観があるんだと思います。
本を書くことは、人生を表すこと。ならば、その本──その人の人生を見、何かしら感想を持つということは、今度は読んだ人の人生を表すことだと思っています。
それを書き手としても、読み手としても、表したい。残したい。伝えたい──著したいと思って立ち上げました。この場所を。
>いまにも走り出したい、でもいま走り出しちゃいけないことは解ってる、だけどジッとしてはいられない、そんなソワソワ感とかウズウズ感をこの作品に感じました。
この作品に限らず、桜庭作品にはそういう部分が徹底して書かれていると思うんですよ。
明言は安易にしませんし、できませんが…その“何か”がテーマであり、それを余すことなく書ききることのできる桜庭一樹という作者の最大の魅力だと思っています。
いずれにせよ、この人は俺には特殊な位置にいます。そういう意味で、感想がもの凄く抽象的になるんですよ。
まさに「読んだ人にしか意味はない」ということを表現しているつもりです。
大変、貴重なご意見をありがとうございました。これからの励みになりますw
できるだけ近いうちにそちらで、ココの続きっぽいコメントをしようと思っています。
>>こぱさん
…なんだ、君か(露骨に対応が違う
>英単語打つの面倒だったからw
どっかからコピペすればいいじゃねえかよ!w
>コパンあと2,3回はやることになりそうですw
アレで普通に笑わされるのが、実は悔しいんだが…
大変、珍妙なご意見をありがとうございました。そこそこ励みになります(ぺっ
- 2006/05/23(火) 20:06:35 |
- URL |
- そる #-
- [ 編集]
う、ウォーズマンスマイルはハウマッチ?>挨拶
>ついに内のサイトが数字的に抜かれました
いや、ほら、二重カウントの見栄っ張りだから(滝汗
>実は俺はパロは得意なのよ(とんねるず世代だし)
お?とんねるず全盛期時代の俺としても、聞き捨てならねえなw
これがまさに!
時代を先取るニューパワー!
…先取ってねえ。むしろ、遅れてるorz
>ただオリジナルがまったく書けない
それはそれでいいじゃね?
ちょっと真面目に言うとな、パロってのは単純に豊富な知識とそれを結びつけるセンスがねえと出来ないんだぞ?
俺にははっきりってパロとか、笑いのほうの才能、センスがないから素直にパロ作家は尊敬してるけどな。
もちろん、そこに──その作品に対して愛がなければパロとは呼ばない、絶対に。
- 2006/05/24(水) 01:28:31 |
- URL |
- そる #-
- [ 編集]
これは、「ふたりの少女の凄絶な《闘い》の記録」です。(『少女には向かない職業』カバー返しより)
- 2006/05/23(火) 00:41:31 |
- こばけんdays
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- 2006/05/23(火) 09:02:17 |
- booklines.net
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- 2006/05/24(水) 19:20:16 |
- 読了本棚
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- 2007/01/15(月) 11:02:44 |
- 粋な提案
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- 2007/04/15(日) 01:52:30 |
- "やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!!