富士見ファンタジア文庫:著・雨木シュウスケ

“最強!学園アクション・ファンタジー、新シリーズ開幕!!強すぎた少年は強くて弱い少女に出会った。”
【大地の実りから見捨てられた世界。異形の汚染獣たちが都市の周りを闊歩し、人類は、それ自体が意識を持ち、歩行する<自律型移動都市>で暮らす。その中の一つ、学園都市ツェルニの新入生レイフォンは一般科の学生だったが、入学式の騒動で生徒会長に才能を見抜かれ、武芸科へ転科するはめになる。ツェルニでも汚染獣からの攻撃に備え、選抜された者たちが自衛小隊を組んでいた。そのまま勝ち気な少女・ニーナの小隊に配属されるレイフォン。しかし彼には剣を持てない理由があった…。戦いを捨てた少年が、ひとりの少女と出会い―─奇跡を生む。史上最強の学園アクション・ファンタジーが開幕!】
※この先はネタバレを含んでいます。未読の方はご注意ください。評価のわりに突っ込みが厳しいのはココのスタンスです。
なんていうかなー…
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無 難 っ ち ゃ 無 難 。
読了直後にぽつりと出てきたのはそれだったなぁ。
いい意味でも、悪い意味でも──突き抜けるようなものはなく、また残るものもなかった。
ばっさりと斬り捨てられないかわりに、絶賛もできないというか…これはって部分がないんだよな。
小奇麗にまとまりすぎた印象が強い。実際、感想書くのも結構難しい作品だと思う、少なくとも俺には。
それに読んでから、ちょっと時間が立ってる(約10日)のもあって、記憶に埋もれちゃってる感がある。
実際、この前後の作品がインパクトが強すぎて「ああ、そう言えばこれも読んだっけなー」くらいにしか思えない。
だからといって別につまらなかったというわけでもなく、だけど面白かったかといわれれば返答に困る。
なので。
気がついた、印象に残っている部分だけ抜き出してみようと思う。
で、なにが大きかったかというと…
主 人 公 が い ま い ち つ か め な い 。
真っ先に思ったのが、コレ。何度も言っているけど、第一に主人公への感情移入を行うスタイルの俺にはかなり重要な要素。
正直、いまだによくわかってない。
どういうキャラなんだコレ?
見た目どおり、ちょっと抜けててお人よし的な優等生かと思ったら──
意外とニヒリストかつリアリスト。元最強で戦闘におけるリミッターが外れたら、まさに鬼。
たまには、おどけてみたり、その場のノリ的なテンションになったりもする。
…分からない。いったい、どこが元型で、何が行動理念なのかが見えてこない。
この終始ぼんやりした主人公像が読み終わるまで続いたために、そのまんまぼんやりとした感想しか持てなかったじゃないだろうか。
「ああああああっ、もうオマエってば結局のとこ、何っ!?」
キャラに声が届くとするなら、ちょうどこんなキブン。
あと、主人公──レイフォンは確かに悩んでいる。過去、自らが招いた不名誉に、今もなお苦しんでいる。それはいい。
こういう苦しみを持ったキャラのほうが人間的に厚みが出るし(人間臭くなる)、内容次第では親近感を得ることもできるだろう。
だが。
過去の不名誉っていうのは、かつての居住区──自律稼動都市レギオスのひとつ“グレンダン”での王から与えられた称号──“天剣”を辱める行為。
その力を以って、非合法な賭け試合に出ていたからって…
な ん か 理 由 と し て 弱 く な い ?
いや、確かにカネというのは切実な問題で、そのヘンは作中でもフォローされてたけどもさ。
それが名誉を汚す行為にあたって、称号を剥奪される──ここまでは分かるんだけど、その後も街中から白眼視されるってのはピンとこない。
どうもこの作品世界では“名誉”ひいては“誇り”ってのが、重要視されるみたいなんだけど…
なんか、それどころでもなくない?
だって、今、世界は危機に瀕しているわけでしょ?
汚染獣と大気のせいでまともにレギオスの外にも出られない。限られたエネルギーを奪い合う世界──
もう名誉とか誇りとか言ってる場合じゃないよね。
誰だって、自分の生活が一番大事で──そのためにはカネがいる。
それって、当たり前じゃないかい?
どうも甘ったれた理屈が通用しないハズの作品世界に、キャラたちが高潔すぎる気がする。
あんたら、ホントにギリギリを生きているって自覚あるの?
てか──表 現 が 悲 劇 的 に す ぎ る 。
不必要に盛り上げすぎたかなーと思わないでもない。
いや、もっともの凄いこと(何)やかしちゃったんだとばかり思ってたし…もう、なんだ人非人扱いされてもおかしくないくらいの。
事実が明らかになったとき「ええー、そんなことー」と思わずにはいられなかった(カネの問題が軽いというつもりはない
この作品の世界背景には、むしろキャラのほうが相応しくないような──そこに齟齬があるのだと思う。
あと、やはり本気を出せないのではなく“出さない”というのは、やはりずるい(作中でも言われていたが
出そうと思えば、出せる力を意図的に出さないというのはどうも納得できかねる。
いや、本当に力そのものを失った。または、過去がトラウマになって、上手く力を引き出せないとかそういう理由なら納得はいくのだが…
もの凄いワガママで出し惜しみしてるんだよな、コイツ。
その悩みも、共感を得がたいものであるし…
ああ、そうか。
単純にコイツが気に入らないんだ、俺。
これまでの過去とどう向き合うのか、どう折り合いをつけていくのか──そういう煮え切らない部分がムカつくんだな、多分。
世の中にはそういう力を出したくても出せなくて、やりたいことがあるのにできなくて。
だから、そういうことで本当に困っている人もいると、身を持って体験しているからこそ言えることなんだけどね…
まあ、俺には「贅沢な悩みだなぁ」と一種、僻みにも似たキモチが浮かんだとはいうまい。
で、続いて思ったのが…
これ、なんてギャルゲ的SLG?
もう設定から──舞台的に激しくゲーム臭い。シナリオなんて、もうそのままゲームとして出てもおかしくないよね。
いわゆるギャルゲ的に女の子と仲良くなりながら、進んでいく戦記モノっぽい。
実際、終始頭の中で会話のシーンは女キャラのバストアップ。戦闘(模擬)シーンはデフォルメキャラの盤上シミュレーションの画像がアリアリと浮かんだぞw
主 人 公 の 周 り 、女 で す ぎ 。
初めて知り合った級友が、かしまし3人娘っていうのがありえない。
なんで、男の子の友人が単純に出てこないの?3人のウチひとりくらいは、男でもいいじゃね?
しかも、レイフォンの所属するチームが女隊長(ヒロイン)ってのがベタベタ。
恐らく物語の中心になる、チームは女2人に主人公入れて男は3人。
このウチ、ひとりはメカニックで性格的にもドラマティックになりえる人物ではない。かつもうひとりがマイペースで(悪い意味で)おっさん臭く、どうにも個人的には好きにはなれない(嫌いということでもないが
もうひとりの女の子はこれまた才能があるにも関わらず、腹に一物抱えてて、本気を出さないという状態。
もしかしてこの作品って、こんなヤツばっか?
な ぜ、ベ ス ト を 尽 く さ な い ッ !?(何
いや、理由はわかった。ちゃんと説明されてるし、まあ、そういうこともあるだろう。
だがしかし!
納得いくかは別。俺は納得したいだけだ!納得は全てに優先するぜッ!(ぅお
そりゃあ、努力家や必死にその域を目指している連中からすれば、腹立つよな…俺だって、現実(同僚とか)にこんなヤツいたらイヤだし。
あー、もー、主人公が無駄に主要女キャラ全員(そこにはいない幼なじみからも汗)から、好意を寄せられるって部分も激しくゲームちっく。
だから、無難なキャラがもてる理由がわかんねーんだってばよ!
んで、レギオスは世界に数あるわけだけど、それぞれの移動ルートでぶつかった際には交流試合が行われて、事実上のエネルギー争奪戦になるっていうことなんだけど…
えっと、最終的には汚染獣と戦うことが主目的になるんだよね、展開的に。
でも、その前にそういう人間同士の戦いが先にあって。
その先にまた学園都市ツェルニ内部での選抜戦──勢力闘争があるんだよね。
最終的なとこに行き着くまでに、どれくらい冊数かけるつもり?
この設定だと本題に入るまでに、もの凄いステップを踏まないといけない気がするんだが…
かと思ってたら、さっそく汚染獣との戦い勃発。
文字通り、学生しかいない都市ツェルニは実戦力に乏しい。んで、小物相手でもめちゃ苦戦するわけで。
強い強いと思ってた連中──部隊長でヒロインのニーナさえも底力のなさを露呈する。
そこで、ウジウジしていた我らがヘタレ主人公・レイフォンは──
愛する幼なじみの一通の手紙だけで、立ち向かう勇気を取り戻す。
うわ、簡単だなー、オマエ。
それで気合全開ウリャウリャのレイフォンは──
ほとんど独りで一万弱の敵を屠り、ボスである母体すら倒しちゃったとさッ!
えとね。
もうパワーインフレが起こっている。
ちょっと、強すぎるってレイフォン!ほかのみんながアホみたく思える戦闘力ってなに?
ぶっちゃけ、オマエ独りいれば世界救えるんじゃないの?(10歳にも満たないときにすでに最強ってヤメレ
てか、オマエみたいなのが少なくともほかに11人もいるグレンダンっていったいどういう世界?
「敵がくるのが、一度に数万っていうのも珍しくなかった」って言ってたけど…
ここまで世界が違いすぎると、マジで他のキャラの活躍を期待できなくならないか?
主人公だけ、強くてニューゲーム状態。
PSOで言うと…難易度ノーマル部屋作ってレベル15くらいで楽しくやってたのに、レベル100軽く超えてるヤツに乱入されたキブンだ(分かりにくい
どうやって他のキャラ追いつけってんだよ…いっそのことブレンダンで戦団作って、汚染獣討伐すればいいじゃないの?
1巻でインパクトを与えるってのは、確かに王道で、効果的だけど…
こ こ ま で や れ と は 言 っ て な い 。
この先、マジどうなるか心配。しかも、もうばれちゃってるしね、レイフォンの実力。
こんな状態で、今更レベルの低い学生に混じって、模擬戦闘するわけ?
あ ん ま り じ ゃ な い か と 思 う 。
この作品最大の欠点は始めに広げすぎた世界がまとまりきってなくてどこかちぐはぐなトコだな、きっと。
とまあ、ここまで悪いとこばっか挙げたけど、逆に言えばその辺りが気にならなかったら、十分面白いのも事実。
読みやすいし、なにより──今まで、ありそうでなかった勇者育成学園モノw
いや、このヘンって過去ネタにしたことあるんだよね。まあ、結論からいうと没った(正確には没喰らった、涙)んだけど…
仮想現代の学園で“冒険科”ってのがあって、ややファンタジーよりのスクールアクション!(笑
その辺りが大きな購入動機になってるのは間違いないね。自分がかつて手がけた題材って、元物書きには興味深いハズだと思うんだけどね、分かってもらえるかなー?(苦笑
総括は“設定的に捻りつつ、王道。今の中心購買層に受ける内容に味付した一品”といったところか…
もう今月には、2巻が出るってんで急いで読んだのが事実なんだけど…
イロイロな意味でこの先が気になる結果になった。
どうやってこの先を続けるのか、どういう展開を見せるのかは確かに興味はある。
もっとも、ある程度先が──王道として押さえてしかるべき部分だけは読めるけども。
ん?3巻は7月発売なんですか…2巻も出来るだけ早く読め、とそういうことですね?
この展開の早さが、無駄に巨編化する危険性を孕んでいて──つい穿った目で見てしまうへそ曲がりな俺ガイル。
そ、ソニックブーム…(超謎
本日のBGM…『INVOKE -インヴォーク-』T.M.Revolution(TVA「機動戦士ガンダム SEED」OP)
